2024年度年賀はがき(寒中):免疫細胞とワクチンの説明です。


2024年度年賀はがき(寒中)のPDF:今回初めて年賀はがき通信面をPowerPointで作成しました。A4で作ってはがきへ縮小します。

年賀状説明文章の補説

 免疫細胞というは、1億種類以上の病原に対応できるように1億種類以上が身体の中に用意されています。種類が多いというのは、病原(細菌やウイルスなど)の表面でくっつく場所(表面の分子構造)が異なるという意味です。1種類の免疫細胞は病原表面のある一箇所にしかくっつきません。これを「特異的」と言います。教科書では抗体1つで説明しますが実際は病原のあっちこっちに種類の異なる抗体がいっぱいくっつくことになります。
 専門用語として病原の表面でくっつく場所をエピトープ(抗原決定基)と言い、そのエピトープにくっつく分子構造をパラトープと呼びます。よく「鍵」と「鍵穴」と比喩されています。鍵穴には専用の鍵しか差し込めないのと同じ意味合いです。1つの病原例えば新型コロナウイルスにはたくさんのエピトープとなる表面すなわち分子構造があります。それら1つのエピトープにくっつくパラトープ(抗体)は1つではなくて複数存在することとなります。

 免疫システムの動きを簡単に説明します(機序と言います:メカニズムという意味です)。最初に病原が入ってくると @自然免疫がすぐさま怪しいと判断して排除したり殲滅したりします。風邪の症状と思われている咳、クシャミ、鼻水といった手段によって身体に害となるものを体外に追い出そうとします(※物理バリアとか化学バリアとして説明されています)。次にA獲得免疫が動き始めますが、自然免疫のようにすぐさまという訳にはいかずすこし手順が必要となり時間が掛かります。例えば1〜2週間くらいかかるとしましょう。その間に病原が増殖すると免疫システムが対抗するために「炎症反応」が起こります。炎症反応とは病原を抑え身体を防御して修復する役割を担っています。しかし炎症反応によって体温が上がり体力を奪うことになります。炎症反応の特徴(5徴)として、発赤、熱感、腫脹、疼痛、機能障害があり身体にダメージを与えることとなります。ワクチンを打つと言うことは擬似的な病原を体内に入れることによって免疫システムを刺激することで免疫の記憶細胞を保存することで本番(病原による感染)に備えることになります。
 獲得免疫では基本的にはB細胞から生成される抗体とキラーT細胞が主役となります。体内に侵入した病原には抗体がまとわりつき・・・破壊します。感染してしまった自分の細胞はキラーT細胞によって破壊されます。いろんな種類の免疫細胞がクローンなどにより大量に増えて、侵入した病原に対して殲滅戦を行います。もしも病原の増殖スピードが免疫戦力による殲滅スピードを上回ってしまうと免疫システムの負けということになります。

 このような天文学的な種類の免疫細胞をどうやって生体が用意するのかを解明したのが利根川進先生の「遺伝子再構成」ということになります。遺伝子生物学が進化した発見と言えます。
 天文学的な免疫細胞の種類とクローンの数は人それぞれです。新型インフルエンザウイルスにくっつく抗体が多い人もいれば少ない人もいます。
 「新型コロナウイルス専用の抗体」という意味の日本語を耳にしますが正確ではありません。ある病気や病原専用の抗体などは存在しません。また新しいワクチンを打ったら新しい抗体がさもできるようなイメージがありますが、新たに抗体ができるということもありません。身体の中に用意されている抗体が基本です。当然年齢を重ねていくと免疫細胞や記憶細胞は減っていきます。もし新型コロナウイルスにくっつくことのできる免疫細胞や抗体(を生産するB細胞)がなくなってしまったら新型コロナウイルスに対して獲得免疫としてはなすすべが無いと言うことになります。
 免疫細胞や病原はナノメートルという微小な世界なので、免疫細胞は相手がどのような細菌やウイルスかはわかるはずがありません。ウイルスにしても自分がどこにいてどこにくっついているのかは知るよしもありません。結局は分子構造レベルでくっつくかくっつかないかでしかないのです。もし新型インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの表面分子に似ているような箇所(エピトープ:抗原決定基)があれば、1つの抗体が新型インフルエンザウイルスにも新型コロナウイルスにもくっつく可能性があるのです。ですからワクチンは薬剤とは異なり、その人が持っている免疫システムを前提にしているため万能薬ではないのです。ワクチンが対象とする免疫細胞を持っていない人にそのワクチンを打っても何も起こらないということです。
 念のために言っておきます。「自分にはある病気の免疫細胞がないのではないか」と心配する必要はありません。免疫細胞は天文学的に膨大な種類があらかじめ用意されています。10の11乗から15乗以上で億をゆうに超える1000兆といった種類のパラトープが用意されていることになるのでどれかしら多数の免疫細胞(抗体など)がくっつくことになります。ただ人によっては多い少ないというのはあります。11乗の人もいれば13乗の人もいるということです。

それでは
 ワクチンが効くかどうかは人それぞれとなるとどうしたらよいのかと言うことになります。結局は自分の免疫システムを強くしておくと言うことにつきます。実は免疫細胞も情報伝達に使うサイトカインもタンパク質でできています。タンパク質は細胞内部でアミノ酸部品から生成しています。ですからアミノ酸部品の在庫を持っていることが最重要となります。ここでの提言は必須アミノ酸在庫量を増やすために高級タンパク質をちょっと多めに摂取して免疫システムを応援しましょうということです。その他の栄養素、睡眠、ストレス管理なども重要です。でもやっぱりタンパク質です。

 タンパク質は食事から採取するのが良いです。小腸や大腸といった消化器官を動かすためです。ただ人によって80gで十分かどうかはわかりません。これまた人によっては栄養素吸収の効率が違うためです。市販されている必須アミノサプリやシロップ(ミネドリン)、錠剤だとアニマリン、スポーツしている人であればアミノスコア100のプロテインなどを補助的に摂取するのもありです。

以上■